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私が選ぶ 日本の「もしバフェ」5銘柄(窪田真之) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

2018/5/22

バフェット氏の人気は衰えていない=AP
「バフェット氏は一見、面白みがなくても安定的に成長している企業を見つけて投資し、高いリターンをあげてきた」

 米投資会社バークシャー・ハザウェイを率いる著名投資家ウォーレン・バフェット氏の人気は87歳になった今も衰えていません。ネブラスカ州オマハで5日開催されたバークシャーの年次株主総会には、世界中から4万人の株主が集まりました。バフェット氏が語る相場観を直接聞くことができる貴重な機会だからです。

 私もバフェット氏のファンのひとりです。彼の運用スタイルはバリュー(割安)株重視ですが、それはまさに、私が25年間のファンドマネジャー時代に貫いた運用スタイルです。

 私は不人気株、急落している株の中からPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの投資指標で見て安すぎると判断した株を発掘して投資することを徹底してきました。

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■面白みがなくても安定成長している企業

 バフェット氏も一見、面白みのない企業でも実は競争が少ない分野で安定的に成長している企業を見つけて投資し、高いリターンをあげてきました。私は今の日本株にも「バフェット流投資」の基準で買える銘柄はいろいろあると思います。

 財務内容が良く、キャッシュフローが潤沢で、安定高収益にもかかわらず、不人気で割安な株を探せばいいわけです。以下が、私が考える「もしバフェット氏が日本株ファンドマネジャーだったら買うであろう銘柄」の候補です。

 このいわゆる「もしバフェ」銘柄ですが、まず日本たばこ産業JT)を挙げたいと思います。同社は国内の喫煙者減少が不安材料となり、株価は割安に放置されています。ただし、実際には、国内タバコ事業は喫煙者が減っても、継続的に値上げすることで収益を維持してきました。JTは財務内容が良好で、高い利益率を実現しています。それに加えて、買収巧者です。喫煙者が増加している新興国でタバコ会社を次々と買収してきました。また、増配や自社株買いなど株主への利益配分に積極的なことも評価できます。

 

次にブリヂストンです。大きな理由のひとつは安定的に高収益を上げていくと判断されるからです。ブリヂストンは同じ自動車関連でもトヨタ自動車などの完成車メーカーとは違います。業績は新車販売の影響を受けますが、その影響はトヨタほど大きくありません。タイヤメーカーは更新タイヤ(取り換え用のタイヤ)が重要な収益源となっているからです。更新タイヤは新車タイヤより利益率が高く、世界の自動車保有台数が拡大していく中で、安定的な需要拡大が見込まれます。

 また、ガソリン車やハイブリッド車に強いトヨタは、電気自動車が主流になると逆風ですが、ブリヂストンはこのリスクと無縁です。さらに、巨大市場の米国ではトランプ大統領が日本車の輸入関税を引き上げる可能性を示唆していますが、ブリヂストンはタイヤ世界首位で、日本車だけでなく、米国車にも使われるのでターゲットになりにくいと考えられます。

リーマン・ショック時に米金融株を買う

 三菱UFJフィナンシャル・グループも高収益の維持が期待されます。三菱UFJメガバンクの中でも利ざや(貸出金利と預金金利の差)の厚い海外で与信が拡大してしており、業務の多角化(信託・証券・リース・消費者金融など)も進んでいます。日銀の金融緩和の長期化で国内では銀行業の利ざや縮小が続き、特に国内業務に特化した地方銀行は生き残りが難しくなるでしょうが、三菱UFJはそうしたリスクは小さいと思われます。

 バフェット氏は、リーマン・ショックの時に過度に売られた米国の金融株を買い、大きなリターンを得ています。収益基盤がしっかりしている割に、株価が割安な日本のメガバンクも投資基準にかなうのではないかと、私は考えます。

 そしてJR東日本です。バフェット氏はインフラを支配する企業に関心を持っています。日本でいうと、この分野で圧倒的な強みを持つのがJR東日本です。インバウンド(訪日外国人)ブームの恩恵で、新幹線や観光列車、関連ビジネス(ホテルなど)の需要が拡大しています。

 私はJR東日本は事実上、日本で最強の不動産会社であると考えています。都心部を中心に日本の不動産価格はJRの駅周辺が一番高く、遠ざかるほど安くなる構造です。JR東日本も駅周辺に持つ鉄道用地を不動産事業に転換することで利益を拡大してきました。同社の有価証券報告書によると、2017年3月末時点で賃貸不動産の含み益が1兆3030億円もあります。

ハゲタカファンドに似た投資スタイルも

 同社は有利な立地を生かした小売業やカード事業でも高い競争力を持っています。成長率は高くないですが、安定的に成長していくと予想します。

 最後にKDDIです。同社は携帯電話事業の競争激化懸念で株価は割安です。ただし、KDDIは世界景気に影響されずに安定成長を続け、18年3月期まで16期連続の増配を達成しています。様々なIT(情報技術)サービスも手がけており、これからも安定成長を維持していくと予想しています。

 一口に「バフェット流」といっても若い無名の頃と、年を取り有名になった後では、投資のやり方がやや異なります。若い頃はディープ・バリュー(激安)株を買って、その後の急激な値上がりで稼ぐ投資スタイルが見られました。今でいう「ハゲタカファンド」に少しだけ似たようなところがあったのです。

 一方、年を経て有名になり、巨額の資金を動かすようになってからは安定的に成長する株をより重視するようになりました。個人投資家の皆さんもバフェット氏の投資スタイルを参考にしながら、銘柄発掘に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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