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北朝鮮 ミサイルの次に日本を狙っている北朝鮮の隠し兵器

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北朝鮮は9月12日に出された国連安保理の制裁決議に反発し、これを「峻烈に断罪、糾弾し、全面排撃する」とした。さらに北朝鮮の在ジュネーブ大使は国連の軍縮会議でアメリカに「最大の苦痛」を与えるなどと発言したとされた。

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その言葉通りというべきか、9月15日朝、またしても北海道・襟裳岬の東方2000キロの海上に向けて、弾道ミサイルとみられるものを発射したのだ。毎度のことながら、北朝鮮の挑発のエスカレートはとどまるところを知らない。

ではこのあと、北朝鮮はさらに、どんな軍事行動に出る可能性があるのだろうか。ICBM、すなわち大陸間弾道ミサイルや水爆実験のニュースが連日のように報道されているため、「核を積んだミサイルが日本を飛び越えるのではなく、標的にしてきたら……」といった不安を感じている方は多いだろう。たしかに、それも「過剰な心配」とは言えなくなってきた。

だがおさえておきたいのは、基本的にICBMSLBM(潜水艦発射弾頭ミサイル)などは、アメリカを挑発(あるいは実際に攻撃)するためのもので、日本を標的にするならば、北朝鮮がすでに300発以上保有していると言われる中距離ミサイル、ノドンやスカッドで十分だということだ。

私の取材では、こうしたミサイル以外にも、一部の防衛省関係者がいま、真剣に心配している「北の攻撃方法」があるという。

なんと、それは「風船爆弾」だというのだ。

風船爆弾とは、第2次大戦中、旧日本陸軍が実際に使用した兵器である。昭和19年11月3日からの約半年間に、陸軍は爆弾を取り付けた気球を約9300発、飛ばした。一部の風船爆弾は偏西風のジェット気流に乗って太平洋を横断した。アメリカ側の記録によれば、285発がアメリカ本土に到達し、その飛行距離は8000キロに達していた。

実際の風船爆弾北米に到達した旧日本軍の風船爆弾を撮影した唯一の写真とされるもの(Photo by Tronto Star Archives / Getty Images)
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旧軍では「ふ号兵器」と呼ばれた、いま聞くと冗談のようなローテク、ローコストの兵器によって、米国内では民間人6人が死亡している。戦時中アメリカ国内では、日本軍の風船爆弾について厳しい箝口令が布かれ、被害は発表されなかった。一般国民を恐怖に陥れる風船爆弾心理的効果を、米軍がそれだけ危惧していたということだ。

余談だが、風船爆弾を回収した米軍は、そこに使われていた接着剤の正体が何なのか戦後まで解明できなかったが、実はこんにゃくだったというエピソードもある。

 

 

さて、話を本題に戻そう。なぜ、いま北朝鮮風船爆弾を使うというのか。第一に、核・生物・化学兵器のいわゆるNBC兵器(Nuclear, Bio, Chemical Weapons)を実際に使用してしまうと、国際社会の大きな反発が避けられない、ということがある。中露もさすがに看過できないことは明白で、瀬戸際外交に長けた北朝鮮がいきなりそんな兵器を使ってくるとは考えにくい。

第二に、北朝鮮自身が、たびたび「風船攻撃」を受けてきたという経緯がある。韓国側の団体が、南北国境を越えて北の人々に政治的なビラを送ろうとバルーンを飛ばしてきたのだ。北朝鮮もまた、この手法を逆手にとって「反撃」を行っている。今年8月に韓国・仁川に届いた北朝鮮の大型バルーンからは、ICBM発射成功を大きく謳った政治ビラが見つかった。

北朝鮮から放たれたとみられる風船の一部は、すでに日本国内でも確認されているが、現時点では韓国に向けて飛ばしたものが、たまたま日本まで届いたにすぎないと考えられている。しかし、「日本まで届く」という実績となったこともまた、たしかなのだ。

第三に、風船爆弾には意外にも、さまざまな軍事的なメリットがある。低空で飛ぶ、非金属性のバルーンは、レーダーでの探知が難しい。製造コストは極めて安価だ。飛ばす場所も選ばない。夜間に日本近海まで船で近づき、飛ばすこともできる。さらに、どこに落下するか分からないことで、相手の恐怖心を煽る効果が絶大である。

いまの北朝鮮にとって、この「相手の恐怖心を煽る」戦略は、現実的かつ合理的な攻撃方法だといえる。だからこそ、防衛省関係者はこの「ふ号作戦」の再来を懸念しているのだ。

北朝鮮は、風船に何も本当の爆弾を載せておく必要はない。「次は生物・化学兵器を載せてやる」などと脅すビラでも載せておけば十分だ。日本国内でパニックを起こすことができれば、治安・防衛面での混乱もさることながら、経済的な大損害を日本に与えることができる。公共交通機関が乱れたり、通勤・通学を控えようとするなど、「万が一」に備えて日本社会が動かざるを得ない状況になれば、思う壺だというのである。

では、風船爆弾を防ぐことは出来るのだろうか? 残念ながら、それはまず不可能だという。

 

私は、航空自衛隊の現役ファイターパイロットにも尋ねてみた。想定しうる対処方法はというと、目視による機銃攻撃のみになる。雲間に入ったら、「もうお手上げ」だという答えが返ってきた。もちろん、高価な空対空ミサイルも役には立たないし、イージス艦のSM-3や、PAC-3地対空誘導弾ペトリオットも目標を補足できない。

忍び寄るバルーンを確実に撃ち落とすという作業は、渡り鳥を阻止するのと同じで、気の遠くなるようなものになる。もしやろうとすれば、自衛隊海上保安庁、警察、猟友会の人々を総動員して、小銃、拳銃、猟銃を構え、日本海側に待機してもらうしかないだろう。日本海側の海岸線は5000キロ以上もあるのだ。

治安機関の通常業務に多大な支障をきたすという意味では、その時点で北朝鮮の術中にはまってしまうことになるが、撃ち落とそうと決めた場合には、やむを得ない。

それでも、天候が悪い場合や深夜に飛来するケースでは、射撃不可能である。跳弾の危険性も高い。

では、どうするか。そうした予想を超えた攻撃の仕方もあるということを知ることから始めるしかないだろう。軍事作戦というものは、常識外の行動を選ぶものである。どんな卑怯な手段であっても、作戦が成功すれば良いのだ。

実際には限定的な被害しか及ぼさない兵器、あるいは載っているのはビラだけで実害のないバルーンであっても、こちらが恐怖に震え、過剰反応してパニックに陥ることが相手の思う壺なのである。

こんなときだからこそ、これまでに増して、不審物には近づかないこと。そして、思いもかけない攻撃の仕方もあるという知識を持っておくこと。残念ながら、日本でもそんな心構えが必要な状況になってきているようだ。

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