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イニエスタ、神戸移籍は最終段階?! 報じたのは伝統の老舗メディア。“煽り“とは異なる信ぴょう性

FCバルセロナ生え抜きのキャプテン、アンドレス・イニエスタJリーグヴィッセル神戸へ移籍する…というニュースは世界を騒がせた。だが、実際にこの話はどれほど現実味のあるものなのだろうか。第一報を伝えた地元メディアの事情を紐解くことで、その信ぴょう性が増してきていることがわかった。

(取材・文:山本美智子【スペイン】)

 

イニエスタの神戸移籍。第一報を伝えたのはラジオ

 FCバルセロナのキャプテン、栄光のスペイン代表のパスサッカーを象徴し、スペイン国内で最も愛されていると言っても過言ではない選手、アンドレス・イニエスタが来季、日本でプレーする。移籍先は、Jリーグヴィッセル神戸だ。

 こんな衝撃的なニュースが流れたのは、今週の月曜日(7日)の午後だった。なぜこのニュースがそんなに衝撃的だったのか? それは、誰もがイニエスタは来季、中国の重慶当代力帆足球倶楽部でプレーすると信じて疑っていなかったからだ。

 何もあの実力で、中国に行かなくても…という意見は、まことしやかにささやかれていたものの、重慶力帆の会長自身が数日前に「アンドレス・イニエスタの到着は、重慶の大きな機動力となるだろう。我々のブランドにプラスアルファを与えてくれると確信している」と話していたため、それを疑う声はなかった。

 ちなみに、この衝撃的なニュースの第一報を伝えたのは『カタルーニャラジオ』だ。FCバルセロナが試合前後に行う監督記者会見で、国内外を問わず、全メディアの前で最初に質問することを許されている老舗のメディアであり、FCバルセロナの歴史と共に歩んできている。

 その取材力には定評があり、視聴率稼ぎに根拠のない情報を流すタイプのメディアではない。また、地元のテレビ局『TV3』は、多くのFCバルセロナの放映権を手にしている。それはサッカーのトップチームに限らず、バルサユースの試合から、バスケットボール、ハンドボール、フットサルといった試合の放映にまで及び、FCバルセロナとの関係の深さを表現しているテレビ局だが、その局が試合を提供する際に流す音声は、『カタルーニャラジオ』のものだ。

 昨年、楽天FCバルセロナの胸スポンサーープレミアムパートナーーとなった際に、公式発表より一早く、報道したのも『TV3』だった。つまり、この地元の2大メディアーー『カタルーニャラジオ』と『TV3』ーーは、FCバルセロナ内で非常に大きな力を持っているのだ。

イニエスタ本人の将来に対する考えは…

 だからこそ「『カタルーニャラジオ』が、イニエスタヴィッセル神戸移籍の可能性を報じた!」と、その他のスペインメディアも一斉に電子版で後追いの大騒ぎを始めたのである。

 ちなみに、スペインの主要ラジオの一つ『カデナ・セール』局は、「ヴィッセル神戸と話が決まった」と確定事項のように報じたが、『カタルーニャラジオ』はあくまでも「交渉はかなり進んだ状態」と伝えるにとどめている。
 
 前置きが長くなったが、一方のイニエスタ本人はどう思っているのだろうか。今回の騒動が起きた後の9日にホームで行われたリーグ戦、ビジャレアル戦の後のミックスゾーンにて、メディアを前に将来について「ヨーロッパ以外なら、どこでも可能性はある。中国という話があって、今度は日本の名前があって、オーストラリアというのも聞いた。発表した時に(全員が)知ることになるだろうが、僕にはまだ1週間半、楽しむ時間が残っているし、(リーガが)終わった時点で、僕の気持ちは代表戦と将来のことについて向かうだろう。(契約を)締結するにあたり、細かいディテールが残っている。最適な選択肢を選ぶようにするよ」と話している。

 とはいえ、バルサのキャプテンたる人物が、第一線から退いた時にどこに行くのか、という問いは、社会問題化している。

 ビジャレアル戦から一夜明けた翌日の10日、某ブランドのイベントに出席したイニエスタは、そこで将来について再び聞かれ、「発表するのは、いったんリーガが終わって、僕のチームとの契約が終わってからになる。その10日間に、あらゆるレベルで最適な選択肢の決定を下すように努力するし、この決断でミスをしないようにする。自分の人生を捧げたクラブを去るというだけで難しいのだから」と改めてコメントしている。

 その一方で、この日、オーストラリアサッカー協会のエグゼクティブチーフを務めるデイビッド・ギャロップ氏が、イニエスタ獲得に関心があることを表明。「世界中からオファーがあるだろうが、オーストラリアは競争力の高いリーグを提供でき、オーストラリアンなライフスタイルがある。(アレッサンドロ・)デル・ピエロや他の(そのレベルに相当する)選手らを手にしてきている」とアピールした。中国や日本と比べて経済条件でかなわなくても、文化的に大きく異なる国とは違って、ヨーロッパの選手には楽に暮らせますよ…と暗に勧めているのだ。

●神戸移籍は現実的化。決断は6月上旬?

 今回の重慶力帆への移籍の話が流れたのは、イニエスタバルサ退団の正式発表をするやいなや、当初話をつけた金額条件を下げられたことも一つの理由だと、一部では報じられている。また、中国側とは、紙面をかわしていなかったため、それを知ったヴィッセル神戸が交渉を開始した、と地元では伝えられている。

 中国や日本に来れば、バルサでの年俸の2倍あるいは3倍が支払われるとはいえ、いまさら経済条件が問題ではないだろうと見られている。それよりも、家族とともに暮らせて、安心して子育てができる場所、そういった点がイニエスタにとっては大切になってくるのかもしれない。

 経済的に今のヴィッセル神戸のオファーを超えるクラブは世界中を探してもない、という消去法でいけば、ヴィッセル神戸への移籍の線が濃厚になる。また、ヴィッセル神戸のオーナーであり楽天のCEOでもある三木谷浩史氏は、イニエスタの同僚ジェラール・ピケとの個人的な友情を経て、FCバルセロナの胸スポンサーになったという経緯がある。そのため今回の交渉についても、三木谷氏個人が進めていると見られており、中国側に裏切られたと感じているイニエスタサイドからみれば、信用がおける相手というメリットはあるかもしれない。

 だが、経済条件にこだわらないとすれば、英語で話が通じて、現在バルサのフロント入りしているギジェルモ・アモール氏が監督を務めた経験のあるオーストラリアリーグも、悪い選択肢ではない。

 誰もがイニエスタの移籍先から目が離せずにいるが、イニエスタ自身は最後まで詳細まで吟味し尽くした上で決断を下すという姿勢を貫くつもりであり、周囲はワールドカップの開幕寸前までやきもきさせられることになるだろう。

(取材・文:山本美智子【スペイン】)

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